新潟家庭裁判所三条支部 昭和44年(家)1215号 審判 1969年12月23日
申立人 西野タミ(仮名)
主文
本件申立を却下する。
理由
申立人は、申立人の名「タミ」を「良延」と変更することの許可を求め、その理由とするところは、申立人は昭和四一年四月二九日僧侶となつたから、この申立に及ぶというにある。
よつて按ずるに、本件記録に編綴されている日蓮誠宗○○寺管長加藤俊道名義の昭和四四年一〇月一五日付身分証明書によると、申立人が日蓮誠宗○○寺の僧侶であることが認められる。
しかし、申立人審問の結果によると、上記○○寺の僧侶というのは日蓮誠宗に属する特定の寺の住職として寺を管理運営するというものではなく、家庭にあつて日蓮誠宗を信仰布教することを認められたもので「在家出家」と称されるものであり、僧侶となつた前後においても、日常生活・社会生活上何ら具体的に変動はないことが認められ、単に日蓮誠宗を信仰布教するには僧籍上の名として「良延」と称することが望ましいというに過ぎない。
ところで、人の名は個人の同一性の認職のために極めて重要なものであり、名の変更を容易にすることは、個人に対する同一性の認識を害し、引いては社会一般にも支障を与えることになるから戸籍法は、正当な理由がある場合にのみ名の変更を許し、その正当な理由があるかどうかの判断を家庭裁判所にゆだねているのである。このような法の目的にかんがみ本件申立についてみるに、上記認定の本件申立の事情は、戸籍法に規定されている名の変更に必要とされる「正当な事由」には当らないというべきであり、本件申立はその理由がないものとして却下するほかはない。
よつて主文のとおり審判する。
(家事審判官 小池二八)